試用期間終了後に雇用保険に加入させたいのですが・・・。

【質問】

 

当社では、入社後、3ヶ月間の試用期間を設けています。

 

雇用保険や健康保険等については、試用期間が終了後、正社員となった時点で加入としています。

 

ところが、先日、ある社員から、「試用期間終了後に雇用保険等へ加させることは法律違反だ」と訴えがありました。本当でしょうか?

 


【回答】

 

雇用保険や健康保険は、それぞれ労働時間や雇用期間に応じて加入要件が決められています。

 

その加入要件を満たしていれば、試用期間であっても、入社直後から雇用保険等の保険へ加入させる必要があります。

 

 

【解説】

 

このご質問は、非常によく受けます。多くの会社で、試用期間終了後に雇用保険や健康保険等の保険加入させているようです。

 

しかし、雇用保険等の各保険には、それぞれ加入要件が定められていて、その要件を満たせば、たとえ試用期間であっても保険に加入させる必要があります。
 

 
今回は、雇用保険についてのご質問ですので、まずは、雇用保険の加入要件についてお話したいと思います。

 


 
雇用保険は、1週間の労働時間が20時間以上かつ31日以上の雇用見込みがある場合に加入することとなります。(令和7年1月現在)

 

つまり、雇用保険に加入するか否かは、あくまで1週間の労働時間と雇用期間とで判断されることとなります。
 
 
ここは非常に重要なポイントなのですが、雇用保険だけでなく健康保険や厚生年金保険の加入要件は、労働時間や労働日数、雇用期間であって、試用期間やパートタイマーといった身分や名称で決められるわけではないのです。

 

ですから、たとえ、アルバイトであっても、1週間20時間以上働き、31日以上雇用する見込みがあるのであれば、雇用保険に加入させる必要があります。
 

 

 
ところで、確かに入社後、直ぐに退職してしまう社員もいるわけですから、ある程度の期間、様子を見たい、という経営者の方の気持ちもわかります。

 

実際、保険加入を保留していて、直ぐに退職してしまった場合には、結果的には、「保険料が無駄にならず得をした」と思えるかもしれません。

 

しかし、実は、そこには大きなトラブルが起こる危険性が潜んでいるのです。

 

 

現在の雇用保険制度(令和7年1月)では、従業員が、自己都合で退職後、失業等給付を受給するには、最低でも雇用保険に12ヶ月間加入している必要があります。

 

もし、ある従業員が、4月1日に入社し、試用期間を仮に3ヶ月間とし、試用期間終了後の7月1日から雇用保険に加入した場合に、7月1日以降で雇用保険の加入期間で失業等給付を受給することができれば、結果的には、試用期間終了後に雇用保険に加入させても問題は無いのかもしれません。
 


 
ところで、この従業員が、翌年の5月31日に自己都合で退職したらどうなるでしょう?

 

7月1日から雇用保険に加入しているので、加入期間は、10ヶ月間となり、失業等給付をもらうことはできません。


 
しかし、法律通り4月1日から雇用保険に加入していたら、13ヶ月間の加入期間のとなり、失業等給付をもらえることができたのです。(他の要件が満たされている仮定します。)
 

 

 

失業等給付は、従業員の退職後の生活の安定を図る上で非常に重要な制度です。失業等給付は、雇用保険の加入期間が10年未満場合は、通常、90日間支給されます。

 

1日に受給できる金額を6,000円とすると、90日×6,000円=540,000円が、本来の受給額です。

 

もし、このような場合、従業員は、失業等給付がもらえなくても、絶対に納得しないと言えます。

 


 
また、実際に、従業員には給料明細があるので、当初より雇用保険の加入要件を満たしていたことは、容易に証明できます。
 
 
もちろん、溯って4月1日を雇用保険の加入日に変更することは可能な場合もありますが、その場合でも、4月1日より加入条件を満たしていたという書類を添付して変更を行うという、非常に非生産的なことをしなければならなくなります。

 

ですから、無用なトラブルを避けるためには、雇用保険に限らず各保険については、加入すべき条件を満たした時点から加入させるようにして下さい。
 

 

【まとめ】

 

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雇用保険は、週20時間以上の労働と31日以上の雇用見込みがある場合、試用期間中でも加入が義務付けられています(令和7年1月現在)。

 

保険加入を遅らせると、従業員が退職後に失業等給付を受けられないなどのトラブルが発生してしまう可能性があります。

 

例えば、加入を遅らせた結果、失業等給付の資格を満たせずに、従業員が50万円以上の給付金を受け取れなくなってしまうケースも考えられます。

 

さらに、後から加入日を遡る手続きは、手間がかかり非効率な作業となってしまいます。

 

雇用保険に限らず、保険の加入は要件を満たした時点で速やかに行い、無用なトラブルを回避することが重要です。